〜「バラの民主化」へ捧げた、1万分の1の奇跡と努力〜
昨日放送されたNHK「ほっとぐんま630」、みなさまご覧いただけましたでしょうか? 放送前から、たくさんの方から反響をいただき、スタッフ一同とても嬉しく思っております!
ぐんまフラワーパークプラスの大部分を占めるバラの生みの親「バラの育種家 木村卓功さん」。
病気に強く、日本の気候にあった時代を先駆けるバラを多数世に送り出しています。
今回は、放送内でも紹介された育種家・木村卓功さんの「原点」と、誰もが手軽にバラを楽しめる世界を目指した、挑戦の裏側をお届けします。

代々続く農家のバトンと、運命の出会い
今でこそ世界的な育種家として知られる木村さんですが、代々続く、歴史ある農家の跡取りとして生まれました。
「ある意味、悪く言うと『呪い』。良い意味で言うと『なんとかバトンを受け継がなきゃ』という想いがありました」と木村さんは振り返ります。
最初は切りバラを育てる父親の仕事を嫌々手伝っていたそうですが、庭で咲く「ガーデンローズ」に出会い、その運命が劇的に変わります。
流通のために花弁が固い切りバラとは違い、蕾から開花まで刻一刻と表情を変える優雅な美しさ、そして多様な姿と豊かな香りに一瞬で魅了され、バラの「沼」へと引き込まれていきました。
「バラの神様」から突きつけられた、衝撃の一言
30代になり、自身が作ったバラをインターネットで直接届けるようになると、その美しさは瞬く間に評判となりました。しかし同時に、「手入れの大変さ(特に黒星病による落葉)で、バラを諦めてしまう人」を多く目にするようになります。昔のバラは、週に1回や10日に1回という頻度で薬剤散布を続けなければ育てられないのが常識だったからです。
転機が訪れたのは2013年。
フランスを訪れた木村さんは、「バラの神様」と称される巨匠アンドレ・エヴ氏の自宅庭園に招かれます。あまりの美しさに「どれくらいの頻度で消毒しているのか」と尋ねた木村さんに、アンドレ・エヴ氏はこう言葉を返しました。
「君は薬剤散布されたお庭で癒されるのか?」
この言葉は、木村さんの価値観を根本から覆しました。
「日本の過酷な環境でも、無農薬・低農薬で美しく育つバラを作らなければならない」
ここから、木村さんの新しい挑戦が始まります。

一次選抜、そして二次選抜へ。あえて「最悪の環境」を整える、数万株に1株の奇跡
木村さんの圃場は、一般の栽培環境とは真逆の「最悪の環境」にあえて設定されています。 お隣の田んぼから水が染み込んで地べたに水が溜まるような場所で、株の間引きもせず、病気の菌があえて蔓延しやすい高密度の状態で、一切の薬剤散布をせずに放置するのです。
木村さんの長年の経験から花の美しさや香りを中心に一時選抜を行い、そこで選ばれたものはこの圃場で耐病性を試し、より強いバラのみが生き残ります。
自分が丹精込めて育てたバラが病気でボロボロになり、枯れていく姿を見るのは、通常、育種家として身を切られるような辛さを感じるもの。
「僕、Mなので(笑)」と冗談めかして語る木村さんですが、その裏には「こういった悪い環境でふるいにかけていくことでしか、本物の強いバラは作れない」という強い執念がありました。
収入にならない新種づくりのサイクルは最低でも5年。
何度も心が折れそうになりながらも、バラの持つ魔力に突き動かされ、勝ち抜いた「1万〜数万株にわずか1株」の奇跡だけが、私たちの元に届いています。

特別な技術や薬剤がなくても、誰もが日常的にバラを愛せる世界へ。
木村さんのそんな熱い想いを感じながら、ぜひ園内のバラたちを眺めてみてくださいね。
